障害児相談支援の基準の解釈について

【参考】児童福祉法に基づく指定障害児相談支援の事業の人員及び運営に関する基準について
(平成24年3月30日障発0330第23号)
令和6年3月29日改正

目次

第一 基準の性格

基準の性格
  • 基準は、指定障害児相談支援の事業がその目的を達成するため、必要な最低限度の基準を定めたものであり、指定障害児相談支援事業者は、常にその事業の運営の向上に努めなければならないこと。
  • 指定障害児相談支援事業者が満たすべき基準を満たさない場合には、指定障害児相談支援事業者の指定を受けられず、また、運営開始後、基準に違反することが明らかになった場合は、市町村長の指導等の対象となり、この指導等に従わない場合には、当該指定を取り消すことができるものであること。
  • 指定障害児相談支援事業者が運営に関する基準に従って事業の運営をすることができなくなったことを理由として指定が取り消され、法に定める期間の経過後に再度当該事業者から指定障害児相談支援事業所についての指定の申請がなされた場合には、当該事業者が運営に関する基準を遵守することを確保することに特段の注意が必要であり、その改善状況等が確認されない限り指定を行わないものとすること。


第二 指定障害児相談支援に関する基準

1 人員に関する基準

(1) 従業者(基準第3条)
  • 相談支援専門員(第1項)
    • ア 配置基準
      指定障害児相談支援事業者は、事業所ごとに必ず1人以上の相談支援専門員を置くことを定めたものである。指定障害児相談支援事業所に置くべき相談支援専門員は、原則として、サービス提供時間帯を通じて当該サービス以外の職務に従事させてはならない。この場合のサービス提供時間帯とは、相談支援専門員の当該事業所における勤務時間をいうものであり、当該相談支援専門員の常勤・非常勤の別を問わない。
    • イ 兼務
      指定障害児相談支援の業務に支障がない場合においては、相談支援専門員を当該指定障害児相談支援事業所の他の業務又は他の事業所・施設等の業務に従事させることができる。

      これは、例えば、指定障害児相談支援のサービス提供時間帯において、指定障害児相談支援の業務に支障がない場合は、当該指定障害児相談支援事業所の管理者や、併設する事業所の業務等に従事することができることをいう。

      なお、指定特定相談支援事業所、指定一般相談支援事業所、指定自立生活援助事業所、基幹相談支援センター又は障害者相談支援事業等の業務と兼務する場合(ただし、基幹相談支援センター又は障害者相談支援事業等の業務と兼務する場合については、当該業務を委託する市町村が認める場合に限る。)については、業務に支障がない場合として認めるものとする。
    • ウ 兼務に係る留意点
      障害児相談支援の実施に当たっては、中立公正性を担保することが重要である。相談支援専門員が担当する障害児等が利用する指定障害児通所支援事業所(法第 21 条の5の3第1項の指定に係る障害児通所支援事業所をいう。)、基準該当障害児通所支援事業所(法第 21 条の5の4第3項第2号の基準該当通所支援の事業を行う事業所をいう。)、指定障害福祉サービス事業所(障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成 17 年法律第 123 号)第 29 条第1項の指定に係るサービス事業所をいう。)、指定障害者支援施設(同項の指定に係る指定障害者支援施設をいう。)又は基準該当障害福祉サービス事業所(同法第 30 条第1項第2号の基準該当障害福祉サービス事業を行う事業所をいう。)(以下「指定障害児通所支援事業所等」という。)の業務と兼務する場合については、指定障害児通所支援事業所等との中立性の確保や、指定障害児通所支援事業所等と異なる視点での検討が欠如しかねないことから、次に掲げる場合を除き、当該障害児等が利用する指定障害児通所支援事業所等の業務と兼務しない相談支援専門員が継続障害児支援利用援助を実施することを基本とする。(通所給付決定の更新又は通所給付決定の変更に係る障害児支援利用援助について同じ。)
      • a 身近な地域に指定障害児相談支援事業者がない場合
      • b 通所給付決定又は通所給付決定の変更によりサービス内容に著しく変動があった者のうち、当該通所給付決定等から概ね3ヶ月以内の場合(障害児支援利用援助とその直後の継続障害児支援利用援助は一体的な業務であること、また、指定障害児相談支援事業者の変更に当たっては障害児の保護者が別の事業者と契約を締結し直すことが必要となるため、一定期間を猶予する。)
    • c その他市町村がやむを得ないと認める場合
  • 相談支援専門員の標準数(第2項・第3項)
    相談支援専門員の配置は1ヶ月平均の利用者の数が 35 件に対して1人を標準とするものであり、利用者の数が 35 件又はその端数を増すごとに増員することが望ましい。ここでいう「1ヶ月平均」とは、当該月の前6月間の利用者の数を6で除して得た数を指すものであり、「利用者の数」とは、指定障害児支援利用援助又は指定継続障害児支援利用援助を提供した障害児相談支援対象保護者の数を指し、当該指定障害児相談支援事業所が指定特定相談支援事業所も一体的に運営している場合には、指定サービス利用支援又は指定継続サービス利用支援を提供した計画相談支援対象障害者等の数も含むものとする。
  • ③ 相談支援員(第4項)
    • ア 事業者要件
      指定障害児相談支援事業者は、次に掲げる要件をいずれも満たす場合には、相談支援員を置くことができる。
      なお、当該要件については、相談支援員を配置している期間において継続的に満たすことを要するが、やむを得ない理由により一時的に要件を満たさない場合であって、かつ、今後速やかに要件を満たすことが見込まれる場合には、この限りではない。
      • a 当該指定障害児相談支援事業所が機能強化型障害児支援利用援助費の算定要件を満たしていること。
      • b 当該指定障害児相談支援事業所に配置される主任相談支援専門員により、相談支援員に対して指導及び助言が行われる体制が確保されていること。具体的には、次に掲げるいずれの要件も満たす体制が整備されていることとする。
        • (a) 利用者に関する情報又はサービス提供に当たっての留意事項に係る伝達等を目的とした会議の開催
        • (b) 全ての相談支援員に対する主任相談支援専門員の同行による研修の継続的な実施
        • (c) 当該相談支援事業所の全ての相談支援員に対する、地域づくり、人材育成、困難事例への対応などサービスの総合的かつ適切な利用支援等の援助技術の向上等を目的とした指導、助言
    • イ 相談支援員の要件
      配置される相談支援員については、専ら当該指定障害児相談支援事業所の職務に従事する者である者であって、社会福祉士又は精神保健福祉士の資格を有するものであることが必要である。
    • ウ 相談支援員の兼務
      相談支援員については、原則として、サービス提供時間帯を通じて当該サービス以外の職務に従事させてはならない。

      ただし、一体的に管理運営される指定特定相談支援事業所、指定一般相談支援事業所、指定自立生活援助事業所その他これに類する業務に従事させることはできるものとしており、その他これに類する業務とは、基幹相談支援センター及び障害者相談支援事業等の業務とする。

      もっとも、基幹相談支援センター又は障害者相談支援事業等の業務と兼務する場合については、当該業務を委託する市町村等が認める場合に限る。

      なお、相談支援員の兼務に係る留意点については、第二の1の(1)の①のウの規定と同様である。
(2) 管理者(基準第4条)

指定障害児相談支援事業所の管理者は、原則として専ら当該事業所の管理業務に従事するものとする。ただし、以下の場合であって、当該事業所の管理業務に支障がないときは、当該指定障害児相談支援事業所の他の業務や、併設する事業所の業務等を兼ねることができるものとする。

  • ア 当該指定障害児相談支援事業所の従業者としての業務に従事する場合
  • イ 当該指定障害児相談支援事業所以外の他の事業所の管理者又は従業者としての業務に従事する場合であって、当該他の事業所の管理者又は従業者としての業務に従事する時間帯も、当該指定障害児相談支援事業所の障害児への支援の提供の場面等で生じる事象を適時かつ適切に把握し、職員及び業務の一元的な管理・指揮命令を支障なく行うことができ、また、事故発生時等の緊急時の対応について、あらかじめ対応の流れを定め、必要に応じて管理者自身が速やかに出勤できる場合

また、当該指定障害児相談支援事業所に併設され、一体的に管理運営する事業所における管理者又は指定特定相談支援事業所、指定自立生活援助事業所若しくは指定一般相談支援事業所の業務と兼務する場合については、管理業務に支障がない場合として認めるものとする。
なお、管理者は、指定障害児相談支援の従業者である必要はないものである。

(3) 従たる事業所を設置する場合における特例(基準第4条の2)

指定特定相談支援事業所の指定は、原則として指定障害児相談支援の提供を行う事業所ごとに行うものとするが、次の①及び②の要件を満たす場合については、「主たる事業所」のほか、一体的かつ独立したサービス提供の場として、一又は複数の「従たる事業所」を設置することが可能であり、これらを一の事業所として指定することができる取扱いとする。

  • 人員及び設備に関する要件
    • ア「従たる事業所」において専従の従業者が1人以上確保されていること。
    • イ 「主たる事業所」と「従たる事業所」との間の距離が概ね 30分以内で移動可能な距離であって、相談支援専門員の業務の遂行上支障がないこと。
    • ウ利用者の支援に支障がない場合には、基準に定める設備の全部又は一部を設けないこととしても差し支えないこと。
  • 運営に関する要件
    • ア 利用申込みに係る調整、職員に対する技術指導等が一体的に行われること。
    • イ 職員の勤務体制、勤務内容等が一元的に管理されていること。必要な場合には随時、主たる事業所と従たる事業所との間で相互支援が行える体制(例えば、当該従たる事業所の従業者が急病の場合等に、主たる事業所から急遽代替要員を派遣できるような体制)にあること。
    • ウ 苦情処理や損害賠償等に際して、一体的な対応ができる体制にあること。
    • エ 事業の目的や運営方針、営業日や営業時間、利用料等を定める同一の運営規程が定められていること。
    • オ 人事・給与・福利厚生等の勤務条件等による職員管理が一元的に行われるとともに、主たる事業所と当該従たる事業所間の会計が一元的に管理されていること。
  • 離島等の特例
    特別地域(児童福祉法に基づく指定障害児相談支援に要する費用の額の算定に関する基準に基づきこども家庭庁長官が定める地域(平成 24 年厚生労働省告示第 233 号)に定める地域をいう。以下同じ。)に事業所が所在する場合であって、広域で相談支援体制を整備する必要があると各事業所が所在する市町村が認めた場合は、「主たる事業所」と「従たる事業所」との間の距離が移動に概ね 30分以上を要する距離の場合であっても、同一都道府県内で従たる事業所を設置することを可能とする。

    この場合において、都道府県協議会において、当該事業所の適正な運営が図られるように検討するとともに、都道府県が地域生活支援事業の都道府県相談支援体制整備事業の実施等により、当該地域の相談支援体制の整備等に関する助言等を行うことが望ましいため、都道府県及び市町村と必要な連携を図りつつ、事業の運営に努めること。

2 運営に関する基準

(1) 内容及び手続の説明及び同意(基準第5条)

指定障害児相談支援事業者は、障害児等に対し適切な指定障害児相談支援を提供するため、その提供の開始に際し、あらかじめ、利用申込者に対し、当該指定障害児相談支援事業所の運営規程の概要、従業者の勤務体制、事故発生時の対応、苦情処理の体制等の利用申込者がサービスを選択するために必要な重要事項について、利用申込者に係る障害児の障害の特性に応じ、適切に配慮されたわかりやすい説明書やパンフレット等の文書を交付して懇切丁寧に説明を行い、当該事業所から指定障害児相談支援の提供を受けることにつき、当該利用申込者の同意を得なければならないこととしたものである。
なお、利用申込者及び指定障害児相談支援事業所双方の保護の立場から書面によって確認することが望ましいものである。
また、利用申込者との間で当該指定障害児相談支援の提供に係る契約が成立したときは、利用申込者に係る障害児の障害の特性に応じた適切な配慮をもって、社会福祉法(昭和26年法律第45号)第77条第1項の規定に基づき、以下の内容を記載した書面を交付すること。

  • 当該事業の経営者の名称及び主たる事務所の所在地
  • 当該事業の経営者が提供する指定障害児相談支援の内容
  • 当該指定障害児相談支援の提供につき利用申込者が支払うべき額に関する事項
  • 指定障害児相談支援の提供開始年月日
  • 指定障害児相談支援に係る苦情を受け付けるための窓口なお、利用申込者の承諾を得た場合には当該書面に記載すべき事項を電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法により提供することができる。
(2) 契約内容の報告等(基準第6条)

指定障害児相談支援事業者は、指定障害児相談支援の提供に係る契約が成立した時は、遅滞なく市町村に対し契約成立の旨を報告しなければならないこととしたものである。
また、指定障害児相談支援事業者が障害児相談支援対象保護者に係る障害児に対して障害児支援利用計画を作成したときは、市町村にその写しを遅滞なく提出しなければならないこととしている。
なお、モニタリング結果については、以下に掲げる場合その他必要な場合に市町村に報告すること。

  • 通所給付決定の更新や変更が必要となる場合
  • 障害児の生活状況の変化からモニタリング期間の変更が必要な場合
  • モニタリング期間を設定し直す必要がある場合
(3) 提供拒否の禁止(基準第7条)

指定障害児相談支援事業者は、原則として、利用申込に対して応じなければならないことを規定したものであり、特に、障害の程度や所得の多寡を理由にサービスの提供を拒否することを禁止するものである。提供を拒むことのできる正当な理由が有る場合とは、

  • 当該事業所の現員からは利用申込に応じきれない場合
  • 利用申込者に係る障害児の居住地が当該事業所の通常の事業の実施地域外である場合
  • 当該事業所の運営規程において主たる対象とする障害の種類を定めている場合であって、これに該当しない者から利用申込があった場合
  • その他利用申込者及び利用申込者に係る障害児に対し自ら適切な指定障害児相談支援を提供することが困難な場合

等である。
なお、児童福祉法に基づく指定障害児相談支援に要する費用の額の算定に関する基準(平成 24 年厚生労働省告示第 126 号)別表の注12 から注 14 の2に掲げる行動障害支援体制加算、要医療児者支援体制加算、精神障害者支援体制加算又は高次脳機能障害支援体制加算(以下「体制整備加算」という。)を算定している指定障害児相談支援事業者にあっては、算定している各加算に対応した強度行動障害を有する障害児、医療的ケアが必要な障害児、精神障害を有する障害児又は高次脳機能障害を有する障害児の保護者からの利用申込があった場合に、障害特性に対応できないことを理由にサービスの提供を拒むことは認めないものとするので留意すること。

(4) サービス提供困難時の対応(基準第8条)

指定障害児相談支援事業者は、基準第7条の正当な理由により、利用申込者及び利用申込者に係る障害児に対し自ら適切な指定障害児相談支援を提供することが困難であると認めた場合には、基準第8条の規定により、適当な他の指定障害児相談支援事業者の紹介その他の必要な措置を速やかに講じなければならないものである。

(5) 受給資格の確認(基準第9条)

指定障害児相談支援は、現に通所給付決定を受けている障害児相談支援対象保護者に対する指定障害児相談支援の提供に際し、当該障害児相談支援対象保護者の提示する通所受給者証によって、障害児相談支援対象保護者であること、モニタリング期間、通所給付決定の有無及び通所給付決定の有効期間、支給量等障害児支援利用計画の作成やモニタリングの実施に当たり必要な事項を確かめなければならない。
なお、指定障害児相談支援事業者は、通所給付決定を受けていない障害児の保護者について、当該障害児に係る障害児支援利用計画案を作成するときは、当該障害児の保護者の提示する市町村が通知した障害児支援利用計画案提出依頼書によって、市町村から障害児支援利用計画案の提出の依頼を受けた障害児の保護者であることを確かめるものとする。

(6) 通所給付決定の申請に係る援助(基準第10条)

基準第10条は、障害児の保護者の通所給付決定に係る支給期間の終了に伴い、引き続き当該障害児の保護者がサービスを利用する意向がある場合には、市町村の標準処理期間を勘案し、あらかじめ余裕をもって当該障害児の保護者が支給申請を行うことができるよう申請勧奨等の必要な援助を行うことを定めたものである。

(7) 身分を証する書類の携行(基準第11条)

障害児等が安心して指定障害児相談支援の提供を受けられるよう、指定障害児相談支援事業者は、当該指定障害児相談支援事業所の従業者に身分を明らかにする証書や名札等を携行させ、初回訪問時及び障害児又はその家族から求められたときは、これを提示すべき旨を指導しなければならないこととしたものである。
なお、この証書等には、当該指定障害児相談支援事業所の名称、当該従業者の氏名を記載するものとし、当該従業者の写真の貼付や職能の記載を行うことが望ましい。

(8) 障害児相談支援給付費の額等の受領(基準第12条)
  • 法定代理受領を行わない場合
    基準第12条第1項は、指定障害児相談支援事業者が、法定代理受領を行わない指定障害児相談支援を提供した際には、障害児相談支援対象保護者から法第24条の26第2項に規定する厚生労働大臣が定める基準により算定した障害者相談支援給付費の額の支払を受けることとしたものである。
  • 交通費の受領
    同条第2項は、指定障害児相談支援の提供に関して、前項の支払を受ける額のほか、障害児相談支援対象保護者の選定により通常の事業の実施地域以外の地域の居宅において指定障害児相談支援を行う場合の交通費(移動に要する実費)の支払を障害児相談支援対象保護者から受けることができることとしたものである。
  • 領収証の交付
    同条第3項は、前2項の規定による額の支払を受けた場合には、障害児相談支援対象障害者等に対して領収証を交付することとしたものである。
  • 障害児相談支援対象保護者の事前の同意
    同条第4項は、同条第2項の費用の額に係るサービスの提供に当たっては、あらかじめ、障害児相談支援対象保護者に対し、当該サービスの内容及び費用について説明を行い、障害児相談支援対象保護者の同意を得ることとしたものである。
(9) 利用者負担額に係る管理(第13条)

指定障害児相談支援事業者は、利用者負担額に係る管理を行う場合の具体的な取扱いについては、別途通知するところによるものとする。

(10) 障害児相談支援給付費の額に係る通知等(基準第14条)
  • 障害児相談支援対象保護者への通知
    基準第14条第1項は、指定障害児相談支援事業者は、市町村から法定代理受領により指定障害児相談支援に係る障害児相談支援給付費の支給を受けた場合には、障害児相談支援対象保護者に対し、当該障害児相談支援対象保護者に係る障害児相談支援給付費の額を通知することとしたものである。
  • サービス提供証明書の利用者への交付
    同条第2項は、基準第12条第1項の規定による額の支払を受けた場合には、提供した指定障害児相談支援の内容、費用の額その他障害児相談支援対象保護者が市町村に対し障害児相談支援給付費を請求する上で必要と認められる事項を記載したサービス提供証明書を交付しなければならないこととしたものである。
(11) 指定障害児相談支援の具体的取扱方針(基準第15条)

障害児に係るアセスメントの実施、障害児支援利用計画案の作成、サービス担当者会議の開催、障害児支援利用計画の作成、障害児支援利用計画の実施状況の把握などの指定障害児相談支援を構成する一連の業務のあり方並びに当該業務を行う相談支援専門員及び相談支援員の責務を明らかにしたものである。
なお、相談支援員が業務を行う場合、当該相談支援員に対して指導及び助言を行う主任相談支援専門員等が当該相談支援員の業務の状況等を把握し、助言等を定期的に行う体制を確保した上で利用者に対する支援を行う必要がある。
また、相談支援員については、次に掲げる業務のうち、⑫から⑮まで及び⑱の業務を単独で行うことはできないものであるが、当該主任相談支援専門員等が行うこれらの業務場面に同行した上で、利用者に対する支援のプロセス全体に関わることが必要である。

  • 相談支援専門員による障害児支援利用計画の作成(第1項第1号)
    指定障害児相談支援事業所の管理者は、障害児支援利用計画の作成に関する業務を相談支援専門員に担当させることとしたものである。
  • 指定障害児相談支援における障害児の意思の尊重(第1項第2号)
    指定障害児相談支援が、障害児の意思を尊重し、障害児の最善の利益の保障の下で行われることが重要であることに鑑み、障害児が自立した日常生活又は社会生活を営むことができるよう、指定障害児相談支援の提供に当たり、障害児及びその保護者の意思をできる限り尊重するための配慮をするものとしたものである。
  • 指定障害児相談支援の基本的留意点(第1項第3号)
    指定障害児相談支援は、障害児及びその家族の主体的な参加及び自らの課題の解決に向けての意欲の醸成と相まって行われることが重要である。このためには、指定障害児相談支援について障害児又はその家族の十分な理解が求められるものであり、相談支援専門員は、指定障害児相談支援を懇切丁寧に行うことを旨とし、サービスの提供方法等について理解しやすいように説明を行うことが肝要である。

    また、必要に応じて、同じ障害を有する障害児の家族による支援等適切な手法を通じて行うこととする。
  • 障害児支援利用計画作成の基本理念(第2項第1号)
    障害児支援利用計画の作成に当たっては、障害児の意見を尊重し、障害児の最善の利益を保障することが重要であることに鑑み、障害児の年齢や発達の程度に応じて、障害児本人や保護者の意見を聴くなど、当該障害児の意見をできる限り尊重するための配慮をしつつ、障害児等の希望等を踏まえて作成することが基本であることを明記したものである。当該配慮にあたっては、追ってお示しする「支援におけるこどもの意思の尊重・最善の利益の優先考慮の手引き」に十分留意しつつ行うこと。

    なお、相談支援専門員については、上記の配慮等を適切に行うため、都道府県が実施する相談支援専門員を対象にした専門コース別研修の意思決定支援コース及び障害児支援コースを受講することが望ましい。
  • 継続的かつ計画的な福祉サービス等の利用(第2項第2号)
    障害児の自立した日常生活の支援を効果的に行うためには、障害児の心身又は家族の状態等に応じて、継続的かつ計画的に福祉サービス等が提供されることが重要である。相談支援専門員は、障害児支援利用計画の作成又は変更に当たり、継続的かつ計画的な支援という観点に立って福祉サービス等の提供が行われるようにすることが必要であり、継続が困難な、あるいは必要性に乏しい福祉サービス等の利用を助長することがあってはならない。
  • 総合的な障害児支援利用計画の作成(第2項第3号)
    障害児支援利用計画は、障害児の日常生活全般を支援する観点及びインクルージョンの観点に立って作成されることが重要である。このため、障害児支援利用計画の作成または変更に当たっては、障害児及びその家族の希望やアセスメントに基づき、指定通所支援以外の、例えば、保健医療サービス、地域生活支援事業等の市町村が一般施策として行うサービスや当該地域の住民による自発的な活動によるサービス等の利用、保育所等への移行支援等の取組や地域との交流の機会の確保等の取組も含めて障害児支援利用計画に位置づけることにより総合的な計画となるよう努めなければならない。
  • 障害児等によるサービスの選択(第2項第4号)
    相談支援専門員は、障害児等がサービスを選択することを基本に、これを支援するものである。このため、相談支援専門員は、当該障害児等が居住する地域の指定障害児通所支援事業者等に関するサービスの内容、利用料等の情報を適正に障害児又はその家族に対して提供することにより、障害児等にサービスの選択を求めるべきものであり、特定の福祉サービス等の事業を行う者に不当に偏した情報を提供するようなことや、障害児等の選択を求めることなく同一の事業主体の福祉サービスのみによる障害児支援利用計画案を最初から提示することがあってはならない。
  • アセスメントの実施(第2項第5号)
    障害児支援利用計画は、個々の障害児の特性に応じて作成されることが重要である。このため相談支援専門員は、障害児支援利用計画の作成に先立ち障害児のアセスメントを行わなければならない。
    アセスメントとは、障害児が既に提供を受けている福祉サービス等や障害児の状況等の障害児を取り巻く環境等の評価を通じて障害児が生活の質を維持・向上させていく上で生じている問題点を明らかにし、障害児が自立した日常生活を営むことができるように支援する上で解決すべき課題を把握することであり、障害児の生活全般についてその状態を十分把握することが重要である。

    なお、当該アセスメントは、相談支援専門員の個人的な考え方や手法のみによって行われてはならず、その障害児の課題を客観的に抽出するための手法として合理的なものと認められる適切な方法を用いなければならないものである。

    そのため、必要に応じ、自らが行うアセスメントに加え、専門機関が行うアセスメント等を本人同意のもと活用することも重要である。

    なお、基準第30条第2項の規定に基づき、アセスメントの記録は、5年間保存しなければならない。
  • アセスメントにおける留意点(第2項第6号)
    相談支援専門員は、アセスメントの実施に当たっては、障害児が居所において日頃生活している様子や生活環境等を実地で確認することが必要である。そのため、必ず障害児の居宅を訪問し、障害児及びその家族に面接して行わなければならないものである。なお、この場合において、障害児やその家族との間の信頼関係、協働関係の構築が重要であり、相談支援専門員は、面接の趣旨を障害児及びその家族に対して十分に説明し、理解を得なければならない。このため、相談支援専門員は面接技法等の研鑽に努めることが重要である。
  • 障害児支援利用計画案の作成(第2項第7号)
    相談支援専門員は、障害児支援利用計画が障害児の生活の質に直接影響する重要なものであることを十分に認識し、障害児支援利用計画案を作成しなければならない。

    したがって、障害児支援利用計画案は、障害児及びその家族の希望並びに障害児について把握された解決すべき課題をまず明らかにした上で、当該地域における指定通所支援が提供される体制を勘案し、実現可能なものとする必要がある。

    なお、当該障害児支援利用計画案には、提供される福祉サービス等について、その長期的な目標及びそれを達成するための短期的な目標並びにそれらの達成時期、市町村に対するモニタリング期間に係る提案等を明確に盛り込む必要がある。

    特に、モニタリング期間については、利用する予定のサービスの種類のみをもって一律に設定することのないよう障害児の心身の状況や相談支援事業者が必要な利用者との関わりの内容・頻度等を勘案した上で、柔軟かつ適切に提案しなければならない。

    また、児童福祉法施行規則(昭和 23 年厚生労働省令第 11 号)第1条の2の7に規定するモニタリングの実施標準期間(以下「実施標準期間」という。)は相談支援事業者としての必要な関わりの標準的な頻度について示したものであるが、利用者の心身の状況や生活環境等により丁寧な関わりが必要と判断すべき状況にある利用者については、実施標準期間より高い頻度のモニタリング期間を提案すること。その上で、当該達成時期にはモニタリングの実施により障害児支援利用計画及び指定通所支援の評価を行い得るようにすることが重要である。
  • 障害児支援利用計画案の説明及び同意(第2項第8号)
    障害児支援利用計画案に位置付ける福祉サービスの選択は、障害児等自身が行うことが基本であり、また、当該計画案は障害児等の希望を尊重して作成されなければならない。このため、当該計画案の作成に当たって、これに位置付けるサービス及びそのサービスの内容についても障害児等の希望を尊重するとともに、作成された障害児支援利用計画案についても、最終的には、その内容について障害児又はその家族に説明を行った上で文書によって障害児等の同意を得ることを義務づけることにより、障害児等によるサービスの選択やサービス内容等への障害児等の意向の反映の機会を保障するものである。また、相談支援員が障害児支援利用計画案の原案の作成までの業務を担う場合には、提供する相談支援の連続性や利用者との関係性の醸成の観点から、担当する相談支援専門員又は主任相談支援専門員の指導の下、当該相談支援員が障害児等への説明に同席することが望ましい。

    なお、障害児又はその家族への説明に当たっては、当該計画案に位置付けたサービスが、利用者負担が生じる障害児通所給付費等の対象となるか区分した上で行う必要がある。
  • 障害児支援利用計画案の交付(第2項第9号)
    相談支援専門員は、障害児支援利用計画案を作成した際には、遅滞なく障害児等に交付しなければならない。

    なお、基準第30条第2項の規定に基づき、障害児支援利用計画案は、5年間保存しなければならない。
  • サービス担当者会議の開催等による専門的意見の聴取(第2項第10号)
    • ア 趣旨
      相談支援専門員は、障害児及びその保護者の意向を踏まえた効果的かつ実現可能な質の高い障害児支援利用計画を作成するため、通所給付決定が行われた後に、各サービスが共通の目標を達成するための具体的なサービスの内容について、通所給付決定の内容を踏まえて変更を行った障害児支援利用計画案に位置づけた福祉サービス等の担当者(以下「担当者」という。)からなるサービス担当者会議の開催等により、当該計画案の内容について説明を行うとともに、専門的な見地からの意見を求めることが重要である。その際、障害児の意見が尊重され、その最善の利益が優先して考慮される体制を確保する必要がある。
    • イ 会議の出席者
      サービス担当者会議については、障害児の意見を尊重し、障害児の最善の利益を保障することが重要であることに鑑み、当該障害児の年齢や発達の程度に応じて、障害児本人や保護者が参加することが望ましい。

      なお、その際、年齢や発達の程度により意見を表明することが難しい障害児がいることを考慮し、言葉による表現だけでなく、身体の動きや表情、発声なども観察し、意見を尊重することが重要であること。

      また、様々な専門的見地からの意見等を踏まえて障害児支援利用計画を作成するため、サービス担当者会議には担当者のみならず、本人の生活に関係する者や支援関係者が参加するよう、必要な調整に努めること。

      相談支援員が障害児支援利用計画案の原案の作成までの業務を担う場合には、提供する相談支援の連続性や利用者との関係性の醸成の観点から、担当する相談支援専門員又は主任相談支援専門員の指導の下、当該相談支援員がサービス担当者会議に出席することが望ましい。
    • ウ その他留意事項
      「児童福祉法に基づく指定通所支援の事業等の人員、設備及び運営に関する基準」(平成24年厚生労働省令第15号。以下「指定通所支援基準」という。)第15条において、指定障害児通所支援事業者は、市町村又は障害児相談支援事業を行う者が行う連絡調整に協力しなければならない旨の規定を置いている。

      なお、基準第30条第2項の規定に基づき、会議等の記録は、5年間保存しなければならない。
  • サービス担当者会議を踏まえた障害児支援利用計画案の説明及び同意(第2項第 11 号)
    相談支援専門員は、第8号と同様に第10号のサービス担当者会議を踏まえた障害児支援利用計画案の内容について、障害児又はその家族に対して説明を行った上で、文書によって障害児等の同意を得なければならない。
  • 障害児支援利用計画の交付(第2項第 12 号)
    相談支援専門員は、第10号のサービス担当者会議を踏まえた障害児支援利用計画案について、第11号の障害児等の同意を得た後、障害児支援利用計画を作成した際には、遅滞なく障害児等及び担当者に交付しなければならない。

    また、相談支援専門員は、担当者に対して障害児支援利用計画を交付する際に、当該計画の趣旨及び内容等について十分に説明し、各担当者との共有、連携を図った上で、各担当者が自ら提供する福祉サービス等の当該計画における位置付けを理解できるように配慮する必要がある。

    なお、指定通所支援基準第 27 条第7項において、指定障害児通所支援事業者は、指定障害児相談支援事業者に対し個別支援計画を交付しなければならないこととしており、福祉サービス等の提供事業所と相互に計画書及びモニタリング結果を交換すること並びに相互の会議に出席する等により連携を一層促進することが重要である。

    なお、基準第30条第2項の規定に基づき、障害児支援利用計画は、5年間保存しなければならない。
  • 障害児支援利用計画の実施状況等の把握及び評価等(第3項第1号)
    指定障害児相談支援においては、障害児の有する解決すべき課題に即した適切なサービスを組み合わせて障害児に提供し続けることが重要である。このために相談支援専門員は、障害児の解決すべき課題の変化に留意することが重要であり、障害児支援利用計画の作成後においても、障害児及びその家族、福祉サービスの事業を行う者等との連絡を継続的に行うことにより、障害児支援利用計画の実施状況や障害児についての解決すべき課題の把握を行い、必要に応じて障害児支援利用計画及びモニタリング期間の変更、各担当者等との連絡調整その他の便宜の提供を行うとともに、新たな通所給付決定が必要であると認められる場合に、障害児等に対し、通所給付決定に係る申請の勧奨を行うものとする。

    なお、障害児の解決すべき課題の変化は、障害児に直接サービスを提供する各担当者等により把握されることも多いことから、相談支援専門員は、当該各担当者等のサービス担当者と緊密な連携を図り、障害児の解決すべき課題の変化が認められる場合には、円滑に連絡が行われるよう体制の整備に努めなければならない。

    なお、基準第30条第2項の規定に基づき、各担当者等との連絡調整に関する記録は、5年間保存しなければならない。
  • モニタリングの実施(第3項第2号)
    相談支援専門員は、モニタリングに当たっては、障害児支援利用計画の作成後においても、障害児及びその家族、各担当者等との連絡を継続的に行うこととし、市町村が通所給付決定の際に、障害児等に対して通知するモニタリング期間ごとに、障害児の居宅で面接を行い、その結果を記録することが必要である。

    なお、基準第30条第2項の規定に基づき、モニタリングの結果の記録は、5年間保存しなければならない。
  • 障害児支援利用計画及びモニタリング期間の変更(第3項第3号)
    相談支援専門員は、障害児支援利用計画を変更する際には、原則として、基準第15条第2項第1号から第7号及び第10号から第12号までに規定された障害児支援利用計画作成に当たっての一連の業務を行うことが必要である。

    なお、障害児等の希望による軽微な変更(サービス提供日時の変更等)を行う場合には、この必要はないものとする。ただし、この場合においても、相談支援専門員が障害児の解決すべき課題の変化に留意することが重要であることは、同条第3項第1号(障害児支援利用計画の実施状況等の把握及び評価等)に規定したとおりであるので念のため申し添える。

    また、モニタリング期間が適切か否かについてもモニタリング毎に検討する必要があり、相談支援事業者としての関わりの頻度を変更する必要があると判断した場合には、障害児支援利用計画を変更する必要性の如何を問わず、モニタリング期間の変更について、利用者及び市町村と協議し、必要な手続をとるものとする。
  • 指定障害児入所施設等への紹介その他の便宜の提供(第3項第4号)
    相談支援専門員は、適切な福祉サービス等が総合的かつ効率的に提供されているにもかかわらず、障害児がその居宅において日常生活を営むことが困難となったと認める場合又は障害児等が指定障害児入所施設等への入所又は入院を希望する場合には、指定障害児入所施設等への紹介その他の便宜の提供を行うものとする。
  • 指定障害児入所施設等との連携(第3項第5号)
    相談支援専門員は、指定障害児入所施設等から退所又は退院しようとする障害児又はその家族から障害児相談支援の依頼があった場合には、居宅における生活へ円滑に移行できるよう、指定障害児入所施設等と連携を図るとともに、あらかじめ必要な情報の提供や助言等の援助を行うものとする。
  • インクルージョンの観点を踏まえた情報提供及び助言(第3項第6号)
    相談支援専門員は、障害児の心身の状況、その置かれている環境、障害児等の選択及びインクルージョンの観点を踏まえつつ、福祉サービス等が多様な事業者から総合的かつ効率的に提供されるよう必要な情報の提供及び助言を行う等の援助を行うものとする。
(12) テレビ電話装置等を活用した面接(基準第15条の2)
  • 趣旨
    障害児に対するアセスメント及びモニタリングについては、障害児の居宅に訪問して面接することとされているが、離島等の僻地に居住し、かつ、訪問に時間を要する障害児については、一定の要件を満たす場合に限り、テレビ電話装置等を活用した面接を可能とすることで、相談支援事業所の選択肢の拡大や適切な面接の機会の確保を図るものである。
  • 対象者
    以下の要件をいずれも満たす者であること。
    • ア 障害児が特別地域に居住し、かつ、指定障害児相談支援事業所と当該障害児の居宅との間に一定の距離があること。なお、一定の距離については、事業所から居宅への訪問に片道概ね1時間以上を要する距離とする。また、当該時間については、交通機関の運行頻度が少ない等により、合理的経路かつ最短時間となる移動方法を選択した場合の待機時間も含むものであること。
    • イ テレビ電話装置等を活用したアセスメント又はモニタリングを行おうとするその前月又は前々月に、実際に当該障害児の居宅を訪問してアセスメント又はモニタリングに係る面接を行っていること。
  • 留意点
    アセスメント及びモニタリングに係る面接については、訪問によることが原則であるため、障害児及びその保護者に対して、面接方法に係る意向を確認した上で、障害児及びその保護者が訪問による面接を希望する場合は、極力訪問により面接するよう努めること。
(13) 障害児等に対する障害児支援利用計画等の書類の交付(基準第16条)

指定障害児相談支援事業者は、障害児等が他の指定障害児相談支援事業者の利用を希望する場合その他障害児等からの申出があった場合には、変更後の指定障害児相談支援事業者が滞りなく指定障害児相談支援の業務を行うことができるよう、当該障害児等に対し、直近の障害児支援利用計画及びその実施状況に関する書類を交付しなければならないこととしたものである。

(14) 障害児相談支援対象保護者に関する市町村への通知(基準第17条)

法第57条の2第1項の規定により、市町村は、偽りその他不正な手段によって障害児相談支援給付費の支給を受けた者があるときは、その者から、その支給を受けた額に相当する金額の全部又は一部を徴収できるものであり、指定障害児相談支援事業者は、その障害児相談支援対象保護者が偽りその他不正な手段によって障害児相談支援給付費の支給を受け、又は受けようとしたときは、遅滞なく、意見を付して市町村に通知しなければならないこととしたものである。

(15) 管理者の責務(基準第18条)

指定障害児相談支援事業所の管理者の責務を、法の基本理念を踏まえた障害児本位の支援提供を行うため、障害児への支援提供の場面等で生じる事象を適時かつ適切に把握しながら、従業者及び業務の管理を一元的に行うとともに、当該指定障害児相談支援事業所の従業者に基準第 2 章第 3 節(運営に関する基準)を遵守させるための指揮命令を行うこととしたものである。

(16) 運営規程(基準第19条)

指定障害児相談支援の事業の適正な運営及び障害児等に対する適切な指定障害児相談支援の提供を確保するため、基準第19条第1号から第8号までに掲げる事項を内容とする規程を定めることを指定障害児相談支援事業所ごとに義務づけたものであるが、特に次の点に留意するものとする。

  • 従業者の職種、員数及び職務の内容(第2号)
    従業者については、相談支援専門員、相談支援員、その他の従業者に区分し、員数及び職務の内容を記載することとする。なお、従業者の「員数」は日々変わりうるものであるため、業務負担軽減等の観点から、規程を定めるに当たっては、基準第3条において置くべきとされている員数を満たす範囲において、「○人以上」と記載することも差し支えない(基準第5条に規定する重要事項を記した文書に記載する場合についても、同様とする。)
  • 指定障害児相談支援の提供方法及び内容並びに障害児相談支援対象保護者から受領する費用及びその額(第4号)
    指定障害児相談支援の提供方法及び内容については、サービスの内容及び障害児相談支援対象保護者から相談を受ける場所、課題分析の手順等を記載するものとする。
    障害児相談支援対象保護者から受領する費用及びその額については、障害児相談支援給付費(法定代理受領を行わない場合に限る。)のほかに、基準第12条第2項に規定する額を指すものである。
  • 通常の事業の実施地域(第5号)
    通常の事業の実施地域は、客観的にその区域が特定されるものとすること。なお、通常の事業の実施地域は、利用申込みに係る調整等の観点からの目安であり、当該地域を越えてサービスが行われることを妨げるものではないものであること。
  • 事業の主たる対象とする障害の種類を定めた場合には当該障害の種類(第6号)
    指定障害児相談支援事業者は、障害の種類にかかわらず利用者を受け入れることを基本とするが、サービスの専門性を確保するためやむを得ないと認められる場合においては、事業の主たる対象とする障害の種類を特定して事業を実施することも可能であること。
  • 虐待の防止のための措置に関する事項(第7号)
    「虐待の防止のための措置」については、「障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律」(平成23年法律第79号)において、障害者虐待を未然に防止するための対策及び虐待が発生した場合の対応について規定しているところであるが、より実効性を担保する観点から、指定障害児相談支援事業者は、利用者に対する虐待を早期に発見して迅速かつ適切な対応が図られるための必要な措置について、あらかじめ運営規程に定めることとしたものである。

    具体的には、以下に掲げる事項等を指すものであること。
    • ア 虐待の防止に関する担当者の選定
    • イ 成年後見制度の利用支援
    • ウ 苦情解決体制の整備
    • エ 従業者に対する虐待の防止を啓発・普及するための研修の実施(研修方法や研修計画など)
    • オ 基準第 28 条の2第1項の虐待の防止のための対策を検討する委員会(以下「虐待防止委員会」という。)の設置等に関すること
  • その他運営に関する重要事項(第8号)
    指定障害児相談支援事業所が市町村により地域生活支援拠点等(障害者総合支援法第 77 条第4項に規定する地域生活支援拠点等をいう。以下同じ。)として位置付けられている場合は、その旨を明記すること。
(17) 勤務体制の確保等(基準第20条)

障害児等に対する適切な指定障害児相談支援の提供を確保するため、従業者の勤務体制等について規定したものであるが、次の点に留意する必要がある。

  • 基準第20条第1項は、指定障害児相談支援事業所ごとに、原則として月ごとの勤務表を作成し、従業者については、日々の勤務時間、職務の内容、常勤・非常勤の別、管理者との兼務関係等を明確にすることを定めたものであること。
  • 同条第2項は、当該指定障害児相談支援事業所の従業者によって指定障害児相談支援を提供するべきことを規定したものであるが、指定障害児相談支援事業所の従業者とは、雇用契約その他の契約により、当該事業所の管理者の指揮命令下にある従業者を指すものであること。
  • 同条第3項は、当該指定障害児相談支援事業所の従業者の質の向上を図るため、研修機関が実施する研修や当該事業所内の研修への参加の機会を計画的に確保することとしたものであること。
  • 同条第4項は、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(昭和 47 年法律第 113 号)第 11 条第1項及び労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(昭和 41 年法律第 132 号)第 30 条の2第1項の規定に基づき、指定障害児相談支援事業者には、職場におけるセクシュアルハラスメントやパワーハラスメント(以下「職場におけるハラスメント」という。)の防止のための雇用管理上の措置を講じることが義務づけられていることを踏まえ、規定したものである。指定障害児相談支援事業者が講ずべき措置の具体的内容及び指定障害児相談支援事業者が講じることが望ましい取組については、次のとおりとする。

    なお、セクシュアルハラスメントについては、上司や同僚に限らず、利用者やその家族等から受けるものも含まれることに留意すること。
    • ア 指定障害児相談支援事業者が講ずべき措置の具体的内容
      指定障害児相談支援事業者が講ずべき措置の具体的な内容は、事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(平成 18 年厚生労働省告示第 615 号)及び事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(令和2年厚生労働省告示第5号。以下「パワーハラスメント指針」という。)において規定されているとおりであるが、特に留意されたい内容は以下のとおりである。
    • イ 指定障害児相談支援事業者が講じることが望ましい取組について
      パワーハラスメント指針においては、顧客等からの著しい迷惑行為(カスタマーハラスメント)の防止のために、事業主が雇用管理上の配慮として行うことが望ましい取組の例として、①相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備、②被害者への配慮のための取組(メンタルヘルス不調への相談対応、行為者に対して1人で対応させない等)及び③被害防止のための取組(マニュアル作成や研修の実施等、業種・業態等の状況に応じた取組)が規定されているので参考にされたい。
(18) 業務継続計画の作成等(基準第20条の2)
  • 基準第20条の2は、指定障害児相談支援事業者は、感染症や災害が発生した場合にあっても、利用者が継続して指定障害児相談支援の提供を受けられるよう、指定障害児相談支援の提供を継続的に実施するための、及び非常時の体制で早期の業務再開を図るための計画(以下「業務継続計画」という。)を策定するとともに、当該業務継続計画に従い、従業者に対して、必要な研修及び訓練(シミュレーション)を実施しなければならないこととしたものである。なお、業務継続計画の策定、研修及び訓練の実施については、基準第20条の2に基づき指定障害児相談支援事業者に実施が求められるものであるが、他のサービス事業者との連携等により行うことも差し支えない。また、感染症や災害が発生した場合には、従業者が連携して取り組むことが求められることから、研修及び訓練の実施にあたっては、全ての従業者が参加できるようにすることが望ましい。
  • 業務継続計画には、以下の項目等を記載すること。なお、各項目の記載内容については、「障害福祉サービス事業所等における新型コロナウイルス感染症発生時の業務継続ガイドライン」及び「障害福祉サービス事業所等における自然災害発生時の業務継続ガイドライン」を参照されたい。また、想定される災害等は地域によって異なるものであることから、項目については実態に応じて設定すること。なお、感染症及び災害の業務継続計画を一体的に策定することを妨げるものではない。
    • ア 感染症に係る業務継続計画
      • a 平時からの備え(体制構築・整備、感染症防止に向けた取組の実施、備蓄品の確保等)
      • b 初動対応
      • c 感染拡大防止体制の確立(保健所との連携、濃厚接触者への対応、関係者との情報共有等)
    • イ 災害に係る業務継続計画
      • a 平常時の対応(建物・設備の安全対策、電気・水道等のライフラインが停止した場合の対策、必要品の備蓄等)
      • b 緊急時の対応(業務継続計画発動基準、対応体制等)
      • c 他施設及び地域との連携
  • 研修の内容は、感染症及び災害に係る業務継続計画の具体的内容を職員間に共有するとともに、平常時の対応の必要性や、緊急時の対応にかかる理解の励行を行うものとする。

    職員教育を組織的に浸透させていくために、定期的(年1回以上)な教育を開催するとともに、新規採用時には別に研修を実施することが望ましい。また、研修の実施内容についても記録すること。なお、感染症の業務継続計画に係る研修については、感染症の予防及びまん延の防止のための研修と一体的に実施することも差し支えない。
  • 訓練(シミュレーション)においては、感染症や災害が発生した場合において迅速に行動できるよう、業務継続計画に基づき、指定障害児相談支援事業所内の役割分担の確認、感染症や災害が発生した場合に実践する支援の演習等を定期的(年1回以上)に実施するものとする。なお、感染症の業務継続計画に係る訓練については、感染症の予防及びまん延の防止のための訓練と一体的に実施することも差し支えない。

    訓練の実施は、机上を含めその実施手法は問わないものの、机上及び実地で実施するものを適切に組み合わせながら実施することが適切である。
(19) 設備及び備品等(基準第21条)
  • 事務室
    指定障害児相談支援事業所には、事業の運営を行うために必要な面積を有する専用の事務室を設けることが望ましいが、間仕切りする等他の事業の用に供するものと明確に区分される場合は、他の事業と同一の事務室であっても差し支えない。

    なお、この場合に、区分がされていなくても業務に支障がないときは、指定障害児相談支援の事業を行うための区画が明確に特定されていれば足りるものとする。もっとも、事務室が区分されていない場合は特に、障害児等の個人情報の管理に細心の注意を図るとともに、障害児等に関する情報が漏れることのないよう厳重に対応すること。
  • 受付等のスペースの確保
    事務室又は指定障害児相談支援の事業を行うための区画については、利用申込みの受付、相談、サービス担当者会議等に対応するのに適切なスペースを確保するものとし、相談のためのスペース等は障害児等が直接出入りできるとともに、相談内容が周囲に聞こえにくいようにするなど、障害児等が利用しやすく相談しやすい構造とする。
  • 設備及び備品等
    指定障害児相談支援事業者は、指定障害児相談支援に必要な設備及び備品等を確保するものとする。ただし、他の事業所、施設等と同一敷地内にある場合であって、指定障害児相談支援の事業又は当該他の事業所、施設等の運営に支障がない場合は、当該他の事業所、施設等に備え付けられた設備及び備品等を使用することができるものとする。

    なお、事務室又は区画、設備及び備品等については、必ずしも事業者が所有している必要はなく、貸与を受けているものであっても差し支えない。
(20) 衛生管理等(基準第22条)
  • 基準第 22 条第1項及び第2項は、指定障害児相談支援事業者は、従業者の清潔の保持及び健康状態の管理並びに指定障害児相談支援事業所の設備及び備品等の衛生的な管理に努めるべきことを規定したものである。
  • 同条第3項に規定する感染症が発生し、又はまん延しないように講ずるべき措置については、具体的には次のアからウまでの取扱いとすること。
    各事項について、同項に基づき指定障害児相談支援事業所に実施が求められるものであるが、他のサービス事業者との連携等により行うことも差し支えない。
    • ア 感染症の予防及びまん延の防止のための対策を検討する委員会
      当該指定障害児相談支援事業所における感染症の予防及びまん延の防止のための対策を検討する委員会(以下「感染対策委員会」という。)であり、感染対策の知識を有する者を含む、幅広い職種により構成することが望ましく、特に、感染症対策の知識を有する者については外部の者も含め積極的に参画を得ることが望ましい。

      構成メンバーの責任及び役割分担を明確にするとともに、専任の感染対策を担当する者(以下「感染対策担当者」という。)を決めておくことが必要である。感染対策委員会は、利用者の状況など事業所の状況に応じ、概ね6月に1回以上、定期的に開催するとともに、感染症が流行する時期等を勘案して必要に応じ随時開催する必要がある。

      感染対策委員会は、テレビ電話装置等を活用して行うことができるものとする。ただし、障害のある者が参加する場合には、その障害の特性に応じた適切な配慮を行うこと。

      この際、厚生労働省「福祉分野における個人情報保護に関するガイドライン」等を遵守すること。

      なお、感染対策委員会は、他の会議体を設置している場合、これと一体的に設置・運営することとして差し支えない。

      また、指定障害児相談支援事業所に実施が求められるものであるが、他のサービス事業者との連携等により行うことも差し支えない。
    • イ 感染症の予防及びまん延の防止のための指針
      当該指定障害児相談支援事業所における「感染症の予防及びまん延の防止のための指針」には、平常時の対策及び発生時の対応を規定する。

      平常時の対策としては、指定障害児相談支援事業所内の衛生管理(環境の整備等)、支援にかかる感染対策(手洗い、標準的な予防策)等、発生時の対応としては、発生状況の把握、感染拡大の防止、医療機関や保健所、市町村における事業所関係課等の関係機関との連携、行政等への報告等が想定される。

      また、発生時における指定障害児相談支援事業所内の連絡体制や上記の関係機関への連絡体制を整備し、明記しておくことも必要である。

      なお、それぞれの項目の記載内容の例については、「障害福祉サービス施設・事業所職員のための感染対策マニュアル」も踏まえて検討すること。
    • ウ 感染症の予防及びまん延の防止のための研修及び訓練
      従業者に対する「感染症の予防及びまん延の防止のための研修」の内容は、感染対策の基礎的内容等の適切な知識を普及・啓発するとともに、当該指定障害児相談支援事業所における指針に基づいた衛生管理の徹底や衛生的な支援の励行を行うものとする。

      職員教育を組織的に浸透させていくためには、当該指定障害児相談支援事業所が定期的な教育(年1回以上)を開催するとともに、新規採用時には感染対策研修を実施することが望ましい。

      また、研修の実施内容についても記録することが必要である。

      なお、研修の実施は、厚生労働省「障害福祉サービス施設・事業所職員のための感染対策マニュアル」等を活用するなど、指定障害児相談支援事業所内で行うものでも差し支えなく、当該指定障害児相談支援事業所の実態に応じ行うこと。

      また、平時から、実際に感染症が発生した場合を想定し、発生時の対応について、訓練(シミュレーション)を定期的(年1回以上)に行うことが必要である。

      訓練においては、感染症発生時において迅速に行動できるよう、発生時の対応を定めた指針及び研修内容に基づき、指定障害児相談支援事業所内の役割分担の確認や、感染対策をした上での支援の演習などを実施するものとする。

      訓練の実施は、机上を含めその実施手法は問わないものの、机上及び実地で実施するものを適切に組み合わせながら実施することが適切である。
(21) 掲示等(基準第23条)
  • 基準第23条第1項は、基準第5条の規定により指定障害児相談支援の提供開始時に、重要事項(その内容については(1)参照)を利用申込者に対して説明を行った上で同意を得ることに加え、指定障害児相談支援事業所への当該重要事項の掲示を義務づけることにより、サービス提供が開始された後、継続的にサービスが行われている段階においても障害児等の保護を図る趣旨であるが、次に掲げる点に留意する必要がある。

    なお、体制整備加算を算定する場合については、各加算を算定するための要件となる研修を修了した相談支援専門員を配置している旨が分かるよう、併せて掲示すること。
    • ア 指定障害児相談支援事業所の見やすい場所とは、重要事項を伝えるべき利用者又はその家族等に対して見やすい場所のことであること。
    • イ 従業者の勤務体制については、職種ごと、常勤・非常勤ごと等の人数を掲示する趣旨であり、従業者の氏名まで掲示することを求めるものではないこと。
  • 同条第2項は、重要事項を記載したファイル等を利用者又はその家族等が自由に閲覧可能な形で当該指定障害児相談支援事業所内に備え付けることで同条第1項の掲示に代えることができることを規定したものである。
  • 同条第3項は、障害児相談支援の実施状況等を公表することにより、利用申込者のサービスの選択に資することから、第1項に加え、当該重要事項の公表に努めるべき旨を規定したものである。

    なお、公表の方法については、ホームページによる掲載等、適宜工夫することとするが、体制整備加算に関する事項については、第1項による事業所内の掲示だけではなく、公表することが必要となるので留意すること。
(22) 秘密保持等(基準第24条)
  • 基準第24条第1項は、指定障害児相談支援事業所の従業者及び管理者に、その業務上知り得た障害児又はその家族の秘密の保持を義務づけたものである。
  • 同条第2項は、指定障害児相談支援事業者に対して、過去に当該指定障害児相談支援事業所の従業者及び管理者であった者が、その業務上知り得た障害児又はその家族の秘密を漏らすことがないよう必要な措置を取ることを義務づけたものであり、具体的には、指定障害児相談支援事業者は、当該指定障害児相談支援事業所の従業者等が、従業者等でなくなった後においてもこれらの秘密を保持すべき旨を、従業者の雇用時等に取り決めるなどの措置を講ずべきこととするものである。
  • 同条第3項は、相談支援専門員、相談支援員及び障害児支援利用計画に位置付けられた各福祉サービス等の担当者が、サービス担当者会議等において障害児又はその家族の個人情報を用いる場合は、指定障害児相談支援事業者等は、あらかじめ、文書により障害児又はその家族から同意を得る必要があることを規定したものであるが、この同意は、サービス提供開始時に障害児及びその家族から包括的な同意を得ておくことで足りるものである。

    なお、障害者総合支援法 89 条の3第1項に規定する協議会(以下「協議会」という。)において個別事例への支援のあり方に関する協議、調整を行う場合の個人情報の取扱いについても同様である。
(23) 指定障害児通所支援事業者等からの利益収受等の禁止(基準第26条)
  • 基準第26条第1項は、障害児支援利用計画の作成又は変更に関し、指定障害児相談支援事業者及び指定障害児相談支援事業所の管理者が当該指定障害児相談支援事業所の相談支援専門員及び相談支援員に利益誘導のために特定の福祉サービス事業者等によるサービスを位置付ける旨の指示等を行うことを禁じるものである。これは、障害児支援利用計画があくまで障害児の解決すべき課題に即したものであることを要求したものである。例えば、指定障害児相談支援事業者又は指定障害児相談支援事業所の管理者が、同一法人系列の福祉サービス事業者による福祉サービスのみを位置付けるように指示すること等により、解決すべき課題に反するばかりでなく、事実上他の福祉サービス事業者による福祉サービスの利用を妨げることを指すものである。
  • 同条第2項は、指定障害児相談支援事業所の相談支援専門員が障害児等に利益誘導のために特定の福祉サービス事業者によるサービスを利用すべき旨の指示等を行うことを禁止した規定である。これも前項と同様、相談支援の公正中立をうたったものであり、例えば、指定障害児相談支援事業所の相談支援専門員が、同一法人系列の福祉サービス事業者による福祉サービスのみを利用することを指示すること等により、解決すべき課題に反するばかりでなく、事実上他の福祉サービス事業者による福祉サービスの利用を妨げることを指すものである。
  • 同条第3項は、相談支援の公正中立を確保するために、指定障害児相談支援事業者及びその従業者が、障害児等に対して特定の福祉サービス事業者等によるサービスを利用させることの対償として、当該福祉サービス事業者等から金品その他の財産上の利益を享受してはならないこととしたものである。
(24) 苦情解決(基準第27条)
  • 基準第27条第1項は、障害児等の保護及び適切かつ円滑な指定障害児相談支援及び福祉サービス等の利用に資するため、自ら提供した指定障害児相談支援又は障害児支援利用計画に位置付けた福祉サービス等に対する障害児又はその家族からの苦情に迅速かつ適切に対応しなければならないこととしたものである。そのために、苦情を受け付けるための窓口を設置するなど、苦情解決の体制及び手順等当該事業所における苦情を解決するための必要な措置を講じなければならない。

    当該措置の概要については、相談窓口の連絡先、苦情処理の体制及び手順等を重要事項を記した文書等に記載して障害児又はその家族に説明するとともに、事業所に掲示することが望ましい。
  • 同条第2項は、苦情に対し指定障害児相談支援事業者が組織として迅速かつ適切に対応するため、当該苦情(指定障害児相談支援事業者が提供したサービスとは関係のないものを除く。)の受付日、内容等を記録することを義務付けたものである。

    また、指定障害児相談支援事業所は、苦情がサービスの質の向上を図る上での重要な情報であるとの認識に立ち、苦情の内容を踏まえ、サービスの質の向上に向けた取り組みを自ら行うべきである。

    なお、基準第30条第2項の規定に基づき、苦情の内容等の記録は、5年間保存しなければならない。
  • 同条第3項から第6項までの規定は、住民に最も身近な行政庁である市町村及び市町村の総括的立場にある都道府県が、サービスに関する苦情に対応する必要が生ずることから、市町村及び都道府県が、指定障害児相談支援事業者に対する苦情に関する調査や指導、助言及び報告命令を行えることを運営基準上、明確にしたものである。
  • 同条第7項は、社会福祉法上、都道府県社会福祉協議会の運営適正化委員会が福祉サービスに関する苦情の解決について相談等を行うこととされたことを受けて、運営適正化委員会が行う同法第 85 条に規定する調査又はあっせんにできるだけ協力することとしたものである。
(25) 事故発生時の対応(基準第28条)

障害児等が安心して指定障害児相談支援の提供を受けられるよう、指定障害児相談支援事業者は、障害児等に対する指定障害児相談支援の提供により事故が発生した場合は、都道府県、市町村、当該障害児の家族等に対して連絡を行うとともに、必要な措置を講じ、また、障害児等に対する指定障害児相談支援の提供により賠償すべき事故が発生した場合は、損害賠償を速やかに行わなければならないこととしたものである。

なお、基準第30条第2項の規定に基づき、事故の状況及び事故に際して採った処置についての記録は、5年間保存しなければならない。

このほか、以下の点に留意するものとする。

  • 障害児等に対する指定障害児相談支援の提供により事故が発生した場合の対応方法については、あらかじめ指定障害児相談支援事業者が定めておくことが望ましいこと。
    また、事業所にAEDを設置することや救命講習等を受講することが望ましいこと。なお、事業所の近隣にAEDが設置されており、緊急時に使用できるよう、地域においてその体制や連携を構築することでも差し支えない。
  • 指定障害児相談支援事業者は、賠償すべき事態において速やかに賠償を行うため、損害賠償保険に加入しておくことが望ましいこと。
  • 指定障害児相談支援事業者は、事故が生じた際にはその原因を解明し、再発生を防ぐための対策を講じること。なお、「福祉サービスにおける危機管理(リスクマネジメント)に関する取り組み指針」(平成 14 年3月 28 日福祉サービスにおける危機管理に関する検討会)が示されているので、参考にされたい。
(26) 虐待の防止(基準第28条の2)
  • 同条第1項の虐待防止委員会の役割は、以下の3つがある。
    ・ 虐待防止のための計画づくり(虐待防止の研修、労働環境・条件を確認・改善するための実施計画づくり、指針の作成)
    ・ 虐待防止のチェックとモニタリング(虐待が起こりやすい職場環境の確認等)
    ・ 虐待発生後の検証と再発防止策の検討(虐待やその疑いが生じた場合、事案検証の上、再発防止策を検討、実行)
    虐待防止委員会の設置に向けては、構成員の責務及び役割分担を明確にするとともに、専任の虐待防止を担当する者を決めておくことが必要であり、虐待防止委員会の構成員には、利用者やその家族、専門的な知見のある外部の第三者等も加えるよう努めるものとする。

    なお、事業所単位でなく、法人単位での委員会設置も可であるため、事業所の規模に応じた対応を検討すること。

    虐待防止委員会の開催に必要となる人数については事業所の管理者や虐待防止担当者(必置)が参画していれば最低人数は問わないが、委員会での検討結果を従業者に周知徹底することが必要である。

    なお、虐待防止委員会は、少なくとも1年に1回は開催することが必要である。

    指定障害児相談支援事業所が、報告、改善のための方策を定め、周知徹底する目的は、虐待の防止のための対策について、事業所全体で情報共有し、今後の未然防止、再発防止につなげるためのものであり、決して従業者の懲罰を目的としたものではないことに留意することが必要である。

    具体的には、次のような対応を想定している。

    なお、虐待防止委員会における対応状況については、適切に記録の上、5年間保存すること。
    • ア 虐待(不適切な対応事例も含む)が発生した場合、当該事案について報告するための様式を整備すること。
    • イ 従業者は、虐待の発生ごとにその状況、背景等を記録するとともに、アの様式に従い、虐待について報告すること。
    • ウ 虐待防止委員会において、イにより報告された事例を集計し、分析すること。
    • エ 事例の分析に当たっては、虐待の発生時の状況等を分析し、虐待の発生原因、結果等をとりまとめ、当該事例の再発防止策を検討すること。
    • オ 労働環境・条件について確認するための様式を整備するとともに、当該様式に従い作成された内容を集計、報告し、分析すること。
    • カ 報告された事例及び分析結果を従業者に周知徹底すること。
    • キ 再発防止策を講じた後に、その効果について検証すること。
  • 指定障害児相談支援事業所は次のような項目を定めた「虐待防止のための指針」を作成することが望ましい。
    • ア 事業所における虐待防止に関する基本的な考え方
    • イ 虐待防止委員会その他施設内の組織に関する事項
    • ウ 虐待防止のための職員研修に関する基本方針
    • エ 施設内で発生した虐待の報告方法等の方策に関する基本方針
    • オ 虐待発生時の対応に関する基本方針
    • カ 利用者等に対する当該指針の閲覧に関する基本方針
    • キ その他虐待防止の適正化の推進のために必要な基本方針
  • 同条第2項の従業者に対する虐待防止のための研修の実施に当たっては、虐待防止の基礎的内容等適切な知識を普及・啓発するとともに、指針を作成した事業所においては当該指針に基づき、虐待防止の徹底を図るものとする。

    職員教育を組織的に徹底させていくためには、当該指定障害児相談支援事業所の虐待防止委員会が作成した研修プログラムを実施し、定期的な研修を実施(年1回以上)するとともに、新規採用時には必ず虐待防止の研修を実施することが重要である。

    また、研修の実施内容について適切に記録の上、5年間保存すること。なお、研修の実施は、施設内で行う職員研修及び協議会又は基幹相談支援センター等が実施する研修に事業所が参加した場合でも差し支えない。
  • 同条第3項の虐待防止のための担当者については、相談支援専門員を配置すること。なお、当該担当者及び管理者は、「地域生活支援事業の実施について」(平成 18 年8月1日障発第 0801002 号)の別紙2「地域生活支援促進事業実施要綱」の別記2-4の3(3)の都道府県が行う研修に参加することが望ましい。
(27) 会計の区分(基準第29条)

指定障害児相談支援事業者は、指定障害児相談支援事業所ごとに経理を区分するとともに、指定障害児相談支援の事業の会計とその他の事業の会計を区分しなければならないこととしたものである。

(28) 記録の整備(基準第30条)

指定障害児相談支援事業者は、従業者、設備、備品及び会計等に関する諸記録を文書により整備しておく必要があること。

なお、基準第30条第2項により、指定障害児相談支援事業者は、障害児等に対する指定障害児相談支援の提供に関する諸記録のうち、少なくとも次に掲げる記録については、当該障害児相談支援を提供した日から、少なくとも5年以上保存しておかなければならないこととしたものである。

第 15 条第3項第1号に規定する福祉サービス等の事業を行う者等との連絡調整に関する記録

  • ② 個々の利用者ごとに次に掲げる事項を記載した相談支援台帳
  • ア 障害児支援利用計画案及び障害児支援利用計画
  • イ アセスメントの記録
  • ウ サービス担当者会議等の記録
  • エ モニタリングの結果の記録
  • ③ 第 17 条に規定する市町村への通知に係る記録
  • ④ 第 27 条第2項に規定する苦情の内容等の記録
  • ⑤ 第 28 条第2項に規定する事故の状況及び事故に際して採った処置についての記録

第三 雑則

(1) 電磁的記録について

基準第 31 条第1項は、指定障害児相談支援事業者及びその従業者(以下「事業者等」という。)の書面の保存等に係る負担の軽減を図るため、事業者等は、この省令で規定する書面の作成、保存等を次に掲げる電磁的記録により行うことができることとしたものである。

  • 電磁的記録による作成は、事業者等の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録する方法または磁気ディスク等をもって調製する方法によること。
  • 電磁的記録による保存は、以下のいずれかの方法によること。
    • ア 作成された電磁的記録を事業者等の使用に係る電子計算機に備えられたファイル又は磁気ディスク等をもって調製するファイルにより保存する方法
    • イ 書面に記載されている事項をスキャナ等により読み取ってできた電磁的記録を事業者等の使用に係る電子計算機に備えられたファイル又は磁気ディスク等をもって調製するファイルにより保存する方法
  • その他、基準第 31 条第1項において電磁的記録により行うことができるとされているものは、①及び②に準じた方法によること。
  • また、電磁的記録により行う場合は、個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」等を遵守すること。
(2) 電磁的方法について

基準第 31 条第2項は、書面で行うことが規定されている又は想定される交付等(交付、説明、同意その他これに類するものをいう。)について、当該交付等の相手方の利便性向上及び事業者等の業務負担軽減等の観点から、事業者等は、事前に当該交付等の相手方の承諾を得た上で、次に掲げる電磁的方法によることができることとしたものである。

  • 電磁的方法による交付は、以下のアからオまでに準じた方法によること。
    • ア 事業者等は、利用申込者からの申出があった場合には、基準第5条第1項の規定による文書の交付に代えて、エで定めるところにより、当該利用申込者の承諾を得て、当該文書に記すべき重要事項を電磁的方法により提供することができる。この場合において、当該事業者等は、当該文書を交付したものとみなす。
      • a 電子情報処理組織を使用する方法のうち⒜又は⒝に掲げるもの
        • ⒜ 事業者等の使用に係る電子計算機と利用申込者の使用に係る電子計算機とを接続する電気通信回線を通じて送信し、受信者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録する方法
        • ⒝ 事業者等の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録された基準第5条第1項に規定する重要事項を電気通信回線を通じて利用申込者の閲覧に供し、当該利用申込者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに当該重要事項を記録する方法(電磁的方法による提供を受ける旨の承諾又は受けない旨の申出をする場合にあっては、事業者等の使用に係る電子計算機に備えられたファイルにその旨を記録する方法)
      • b 磁気ディスク、シー・ディー・ロムその他これらに準ずる方法により一定の事項を確実に記録しておくことができる物をもって調製するファイルに前項に規定する重要事項を記録したものを交付する方法
    • イ アに掲げる方法は、利用申込者がファイルへの記録を出力することによる文書を作成することができるものでなければならない。
    • ウ アaの「電子情報処理組織」とは、事業者等の使用に係る電子計算機と、利用申込者の使用に係る電子計算機とを電気通信回線で接続した電子情報処理組織をいう。
    • エ 事業者等は、アの規定により基準第5条第1項に規定する重要事項を提供しようとするときは、あらかじめ、当該利用申込者に対し、その用いる次に掲げる電磁的方法の種類及び内容を示し、文書又は電磁的方法による承諾を得なければならない。
      • a アのa及びbに規定する方法のうち事業者等が使用するもの
      • b ファイルへの記録の方式
    • オ エの規定による承諾を得た事業者等は、当該利用申込者から文書又は電磁的方法により電磁的方法による提供を受けない旨の申出があったときは、当該利用申込者に対し、基準第5条第1項に規定する重要事項の提供を電磁的方法によってしてはならない。ただし、当該利用申込者が再びエの規定による承諾をした場合は、この限りでない。
  • 電磁的方法による同意は、例えば電子メールにより当該同意の相手方が同意の意思表示をした場合等が考えられること。なお、「押印についてのQ&A(令和2年6月 19 日内閣府・法務省・経済産業省)」を参考にすること。
  • その他、基準第 31 条第2項において電磁的方法によることができるとされているものは、及びに準じた方法によること。ただし、基準又はこの通知の規定により電磁的方法の定めがあるものについては、当該定めに従うこと。
  • また、電磁的方法による場合は、個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」等を遵守すること。

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